鹿児島県中社研

鹿児島県の中学校社会科教員による自主団体のブログです。

   夜明けの桜島

紀要原稿「編集後記」より

(紀要最後の「編集後記」)

2016年11月に発行された唐木清志「『公民的資質』とは何かー社会科の過去・現在・未来を探るー」(東洋館出版社)のあとがきの最後はこう結ばれていた。
「自分の足を使って取材をし、教材の良さを実感して、子どもの考えを深めるために教材づくりを進めれば、子どもはきちんと教師に応えてくれるものである。こだわりを持った個性的な子どもを育てたければ、教師がまず個性的になることが必要である。借り物の授業ではなく、学校の置かれた地域と、目の前の子どもと、そして、先生方ご自身の社会科観で編まれる社会科授業を、若手に限らずすべての社会科教員は目指すべきである。」
 鹿児島県中社研がめざしてきた社会科授業、社会科教師のありかたはまさにここにあったのではないかと考えさせられる文章であった。2016年度に県大会の授業を提供していただいた池田圭一教諭の水俣病の授業、九州大会で研究発表をしていただいた大野佳子教諭のアフリカの授業、どちらも入念な準備と熱い思いに裏打ちされた「こだわりの授業」であり、私たち事務局員はいつも「九州各県に恥じない、九州各県の社会科教師に是非紹介したい取り組みである」と自負してきたものである。これも先輩達が積み上げてきた先行実践のおかげであると感謝している。
 しかし、鹿児島県中社研の課題もはっきりしている。それは、本紀要の中で田宮先生がずばり指摘している。中社研県大会、九州大会における参加者の少なさであり、参加者の固定化、高齢化という問題である。前述した通り鹿児島県中社研の研究の質の高さは十分に胸を張って良いものと考えている。しかし、そこに集う人間の数が少なければ、その「広がり」は自ずから限られたものとなってしまう。他県が、九州大会開催に際して管理職・行政を含めて「オール社会科」の体制を組むことが出来るのは、やはりうらやましいと言わざるを得ない。ここ数年、県大会の授業者を選定するのに相当なる苦労を要しているのは、まさにその「組織力」の弱さに他ならない。5年前に危機に瀕していた財政状況がようやく持ち直し、何とか2020年度九州大会を開催できる見込みができたことは間違いないが、そこに集う仲間をどう確保するかが最大の課題である。参加すれば必ず「来て良かった」という声を聞く事が多い。要はそういうきっかけをどう生み出していくかであり、そのような魅力的な内容をアピールできるかであると感じている。
 本来、先に書くべきことであろうが、現在の世界と日本をとりまく状況は実に深刻だと言ってよい。イギリスのEU離脱、トランプのアメリカ大統領就任。これ2つをとってみてもいったいどれだけの人が予測できたことであろうか。国内でも、1000兆円を超える公債、増える非正規雇用をはじめとする労働環境の激変など、私たちが生徒を前に授業の中で取り組むべき課題は山積している。
 多くの社会科教師がその叡智を携えて鹿児島県中社研に結集することを切に願っている。
 最後に、ご多忙の中本紀要に原稿を提供していただいた皆様に心から感謝申し上げ編集後記とする。